散策は諦めてビクトールの待つ酒場へと向かいます。
酒場にはレオナさんもおらず、一人グラスを片手に酒を煽る
ビクトールの姿がありました。
ビクトールは「本当に聞くか?」と主人公に再度訪ねてきます。
この選択肢で聞く事をやめることも出来ますが、
大抵のお嬢達は聞いたことでしょう。
ええ、ぜひ聞いた方がいいと思います。
そしてビクトールの口から語られる、
主人公とナナミの養父ゲンカクの過去の話。
都市同盟の英雄と呼ばれた彼が何故、裏切り者と呼ばれ
敵地である王国軍の小さな町で、武術道場を開いていたのか。
国境の競り合いぐらいしか起こらなかった王国軍と同盟軍だったが、
アナベルの父であり、当時のミューズ市長だったダレルが
王国軍相手に戦争を吹っ掛けたと言われているそうだ。
しかしダレルは戦争は未経験、この戦争は王国軍の勝利で終わると思われた時、
洗われた英雄が主人公達の養父ゲンカクだった。
巧みな戦術で王国軍を蹴散らしたゲンカクは、一気に巻き返し
王国軍と五分の戦争を繰り広げる中、王国軍側のハーンという武将が
生まれ故郷が同じ、幼馴染だと知った。
戦争の激化する中でも、二人は休憩中に酒を酌み交わし、語らう程の仲。
そして二人はこの戦いが無意味であることを知ってた。
二人の説得のかいあって戦争は休戦協定が結ばれることになったが、
主人公達の故郷でもあるキャロの街をダレルは
都市同盟のものだとして決して譲らず、またも戦争になり掛けてしまう。
そこでその解決法として一騎打ちが提案され、
両軍の代表としてハーンとゲンカクがその試合に臨むことになった。
ハーンへの剣は王国軍の王アガレス・ブライトが手渡し、
ゲンカクにはダレルが剣を手渡した。
しかし、試合を初めてもゲンカクは一向にその剣を構えようとはしなかった。
幾度となくダレルが戦うように命じても従う事はなかったゲンカク。
時だけが進み、やがて人々はゲンカクのことを
「決闘を汚した」と言い捨て始める。
ハーンは仕方なくゲンカクの手に持った剣を払い落し、
剣先を喉元に当てて、勝負を決したが、
ゲンカクは剣を向けなかった理由は一切話さなかった。
その後、ゲンカクは「裏切り者」の汚名を着せられ
ダレルによって追放処分を受け、キャロの街に行くことになった。
しかし数十年経て、ダレル亡き後、初めてあの時の真実が明るみに出た。
あの決闘の際、ゲンカクに渡された剣は、ダレルの策により
毒が塗り込まれていたという。
ゲンカクが決闘に負ければよし、
勝てば、剣に毒を仕込み勝負を汚した卑怯者として処分する。
…と、それに気付いたゲンカクは剣を抜くことなくこの地を去ったのだった。
このダレルの剣に毒を塗った理由なんですけど、
イマイチ腑に落ちないというか…その意味を考えるのは結構難しいです。
ここから先はArionの勝手な想像なのですがダレルはミューズ市の市長。
アナベルもそうでしたが、ミューズの市長と言う地位は
都市同盟の中でも突出した存在のように思えました。
騎士団にも強気な姿勢で軍を要請したり、
ティント市にもへつらうことなく言い合ったりと、
それこそリーダー的な存在のように思えます。
その場所に立っていたダレルが、自ら起こした戦争の尻拭いを
たかが一武将に助けられ、結局勝利するどころか休戦協定。
自分のお株は下がる一方で、ゲンカクの名声は上がったことでしょう。
そこで、ゲンカクを陥れるためにキャロの街の領土を責め、
あわよくば戦争に引き戻そうとしたのではないかと思います。
ところが一騎打ちの話が出、仕方なくこれを飲み、
ゲンカクを罠にはめようと思ったのでしょう。
大抵ダレルのように自尊心が強そうなキャラは
自分が恥をかくことを極端に嫌いますからね。
彼にとってキャロの街の領土は大して欲しい訳ではなかったと思います。
それはビクトールが「負ければよし」と言っていた言葉から確定。
要はゲンカクを陥れるためだけに一騎打ちを飲んだようなものでしょう。
ゲンカクを裏切り者、卑怯者、腰ぬけ…なんでもいいので
汚名を着せることによって、自分の汚名を少しでも消そうとしたんでしょう。
そんな救いようのない父の背中を見て来たからこそ、
アナベルはああも潔く、かっこよく生きてます。
父の罪を明るみにする事で、父の名を汚すことになろうとも
ゲンカクの一件を世間に公表し、彼の汚名を返上した。
挙句、アナベルは主人公達がゲンカクの子(事実上血の繋がりはないが)と知って「謝罪出来なかった」「罪を償うことが出来なかった」と
口にしているので、頭を下げるつもりでいたんでしょうね。
(現に死に際に「すまなかった」と言ってたし)
アナベルも気丈に見せてはいますが、相当心に深い傷を持ち
つらく苦しいながらも都市同盟のリーダーとして必死に戦い続けてきた
一人のただの女性なのだと思い知らされる話です。
またそれを代弁するのがビクトールと言うのが心苦しい。
彼がアナベルを支えてやることが出来れば、少しは
いや、絶対に何かが変わっていたと思います。
そして汚名が晴れた後でも決して都市同盟の地を踏むことなく、
その身を王国領土に埋葬されたゲンカク…
ビクトールの言葉にもあるように彼は決して同盟軍を恨んでいたから
戻らなかった訳ではなく、主人公やナナミと過ごす時間の方が
大切で愛おしいと思っていたから戻らなかったのだと思います。
そして、王国のあのキャロの街は自分の故郷でもあり、
主人公やナナミの帰ってくる場所…だからこそ、
あの場所で眠りたいのだと思います。
いつでも二人がこの場所に帰ってこれるように。
すごい感動する話だなーーと思って、現実に戻ってきたお嬢。
誰しもが思ったことでしょう。
ナナミ寝てるし―――――――――!!!!と。
私も相当噴きました。
お前な、自分のじいちゃんの話をコモリウタにしてんじゃねぇよ。
それにしてもビクトールは語り部にしても全然いけるキャラですよね。
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